日本で初めて労働組合をつくった男





城常太郎の妻、かね

「職工義友会」の事務所であった常太郎の自宅には、かね婆ちゃんが事務所を守って、いつも待機していたものと思われる。夫婦のいこいの借家をそっくりそのまま労働運動の拠点として使用したのだから、その大変さは想像するに余りある。そういえば、かね婆ちゃんは、戦時中、B29が飛んできて空襲警報が鳴っても、防空壕に避難することが一度もなかったと聞いている。いつも火鉢の前に座って泰然とキセル煙草を吸っていたそうだ。肝の据わった苦労人の風格漂う、かね婆ちゃんの写真姿。その顔の一本一本のしわに、労働運動家の妻として、数々の修羅場を乗り越えてきたこん跡が伺える。

かね婆ちゃんは肥後藩(熊本県)の家老の出身で、「武士道」の塊のような女性だったという。城常太郎の偉業は妻かねの献身的な支えがあったればこそ成し遂げられたと思える。